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典型的な訪問販売は、セールスマンが消費者の自宅に勧誘にくるものである。
「家庭訪問販売」といわれる。
それ以外にも、職場に勧誘にくる「職場訪問販売」、街頭で呼び止めて契約させる「キャッチセールス」も訪問販売である。
セールスマンが消費者を訪問する際には、自分の氏名、所属している会社名、訪問目的を告分の氏名や会社名を告げないというのが日常茶飯事である。
消費者が、相手が当初説明した「点検」とか「アンケート」などの訪問目的を信用し、家にあげて話を聞いているうちに、何かを売りつける訪問販売であるということがわかってくる。
段階になって消費者が「まさかセールスとは思わなかった。
はじめからセールスとわかっていれば、断ったのに」と心外に思って断ろうとしても、相手は居座って契約させるまで帰ろうとしない。
数時間も居座られて困惑し、疲労困億してしまうケースもある。
被害事例のなかには、話を聞いているうちにセールスだということがわかったので断ろうとしたところ、「長時間も説明させて断るとは何ごとだ。
時間泥棒、責任を取れ」と居丈高に開き直られたケースもある。
自分で嘘をついてあがり込んだ挙句、いい分を持ち出すのは理不尽というものだが、その場に自分と相手しかいないという場合には途方に暮れてしまうことが多いようである。
いったんセールスマンを家にあげてしまった以上自分の責任であり、基本的なルールである。
商業道徳上当然のことであるというだけでなく、訪問販売について規制している「特定商取引に関する法律」でも、「訪問販売をしようとするとき」には、消費者と接触を持った最初の段階で、「氏名、会社名、訪問目的」を告げるべきことを義務づけ、点検商法とは、何かの点検だと説明して消費者に近づいてくるものである。
もともと点検商法は、1960年代に消火器の訪問販売で用いられていた。
当時の点検商法は、次のようなものである。
「消防署のほうから消火器の点検にきました」などといって消費者宅を訪問し、「うちには消火器は置いていない」と対応すると、「法律で消火器の設置が義務づけられています」と虚偽して消費者に接触する」という点がポイントになっている。
どのような方法で業者は消費者に近づいてくるのだろうか。
以下に最近の典型的なものを紹介する。
追い出すことはできないと思い込む人も少なくない。
突然作業員らしい服装をした人が「シロアリの無料点検をさせてください」と訪問してくる。
シロアリが発生すると家の土台が食い荒らされて家が倒壊する危険がある、無料で点検する、と説明する。
実はセールスマンであり、消費者に近づくため無料点検と偽って、説明をして(現在でも、一般家庭には法律や条令による消火器の設置義務はない)、「ちょうど手持ちの消火器があるから、購入してください」などといって、販売していくのである。
価格は一万円から二万円程度なので、消費者は現金で代金を、支払い消火器を受け取る。
あとで心配になっていろいろと問い合わせてみると、「実は、あれは、消防署の人ではなく、単なる消火器の訪問販売業者にすぎなかった」「法律での設置義務があるというのも嘘だった」とわかって被害に気づく。
消費者が業者に苦情をいうと、「消防署の職員などとはいっていない」「消防署のある方角から歩いてきたから、消防署のほうからきたといっただけで、嘘はついていない」と開き直るという、あきれた対応をするものが少なくなかった。
1980年代にはあまり見られなくなったが、阪神淡路大震災以後、地震に対する不安につけ込む形で再燃し、現在も全国各地で同様の手口のものが発生し続けている。
「すぐに駆除しないと大変なことになる」「すぐに駆除してあげます」などと畳みかけるようにして契約させて、その日のうちに作業もすませてしまう。
その場で代金の数十万円を回収することもあるが、分割のクレジット契約を締結させることも多い。
消費者があとで苦情を申し出ても、シロアリ駆除は完了しているので支払ってもらうしかない、と強硬に主張する。
シロアリ商法は、発生してもいないシロアリが発生していると虚偽の説明をして契約させた業者が詐欺罪で摘発されたこともあり、マスコミでも問題とされた。
そこで業者は、「ダニの無料点検をします」と勧誘するようになった。
アレルギー問題などでダニに対する不安が強くすぎない。
作業員風を装っているのは、もちろん消費者を信用させるためである。
被害者の多くは「素朴で正直そうな感じの人だった」という。
説明を受けた消費者は、大切な家について心配を煽られ、「今点検だけなら無料」という言葉に引かれて「点検だけなら」と依頼してしまう。
床下にもぐって「点検」する様子を示し、「シロアリがわいている」とさらに不安を煽る。
悪質な業者のなかには、外部からシロアリを持ち込んで消費者をパニックに陥れたケースもある。
最近では、デジカメを持ち込んで「シロアリを写真撮影した」といって、シロアリに食い荒らされた別の家の床下の写真を見せていた業者もあった。
消費者が、めったに床下にもぐって調べたりしない点につけ込んでいるわけである。
じゅうたん、布団などを対象に「ダニの無料点検」をして、「ダニが発生している。
こんな布団で寝ていては病気になる」などといって契約させる。
販売商品は、「強力で、ダニも駆除できる」外国製掃除機、数十万円もする高額な羽毛布団など様々であった。
ダニ商法は、豊田商事の残党なども参入していたこともあって社会問題となり、各地で詐欺や訪問販売法違反で摘発されたため、次は「カビ商法」が出現した。
「カビの無料点検をします」「カビの予防工事をします」といって、床下などを点検するものである。
手口は、シロアリ商法の場合とほぼ同じである。
その後は、「排水溝の点検・清掃」「配水管の点検・清掃」「給水管の点検」など、様々な点検・無料清掃、1000円前後の低廉な清掃などといって訪問してくる形態のものが現れた。
「床下が湿気ている。
ままだと家の土台が腐ってしまう」などと説明して、床下換気扇の取り付け工事や湿気を取り除くための調湿剤や乾燥剤を販売したり、これらを散布する業務の契約をさせたりするものもある。
「耐震検査もついでにしてあげます」などといい、「耐震構造上の問題があり、危険だ。
ままだと大地震がくると家がつぶれる」といって耐震構造を強化するための工事と称して契約をさせ、工事をしてしまうものもある。
種の業者のなかには、耐震構造についての基礎知識や技術も持たない業者もあり、もとの住宅の耐震構造はしっかりしていたのに、点検商法が問題なのは、シロアリやダニだからではない。
点検といいながら、実は高額な契約を押しつけようという別の意図があって近づいてきていることが最も大きな問題なのである。
したがって、点検といって近づいてくるものには、すべて警戒しなければならないと考えるべきである。
消費者が「無料点検」に引かれる理由は何だろうか。
一つは、「無料」ということである。
二つ目は、「自分にはわからないことを、プロに点検してもらえる」ということである。
つまり素人ではわからないのでプロに見てもらう、という点に意味がある。
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